Wednesday, June 30, 2010

KellySIMONZの魅力
 Kelly Simonz(ケリー・サイモン)は、大阪出身のミュージシャン。ミュージシャンがメインだが、マルチタレントである。マルチタレントという言葉の印象はちょっと古く感じるかも知れないが、まさにマルチという言葉がふさわしい。以下に列挙してみよう。

【1】エレキ&アコースティックギター
 ギターを弾く人なら、彼のテクニックがどれほど凄いかわかって貰えるだろう。YouTubeやオフィシャルサイトで映像を見ることができる。

 華麗な左手のフィンガリングや正確な右手のピッキングが凄い。プレイをコピーしてみるとどれほど凄いのかを更に実感するだろう。特にエコノミーピッキングによる上昇や下降の速さや滑らかさ、粒立ちの良さは絶品だ。
 しかし、彼の凄さは速弾きだけではない。ヴィブラートをはじめとした、表現系のテクニックもハイレベルだ。特にトーンコントロールは絶品。ピックの角度や深さで音は千変万化するし、右手の親指の腹の当て具合等で倍音が変わる。また、左手のタッチもあいまって、色気のあるトーンを紡ぎ出す。タッチの良さは特にアコースティックギターで感じることができる。(アルバムはエレクトリックアコースティックギターで録音されていることが多いが、個人的にはそのタッチがいくらか消えてしまうというか、アコースティックギターとは別の楽器だと思う。)
 このタッチやトーンコントロールは、音源が圧縮されるほどニュアンスが消えてしまう。できればmp3やネット上の動画でないCD等で、高音質のイヤフォンやステレオセットで聴いて欲しい。(とはいっても比較的高音質のサイトも出てきてるけど)
 加えて、タイム感が素晴らしい。ノリやグルーヴというか、彼のギター(や他の楽器も)はよく歌うし、ドライヴ感が心地よい。凄く洋楽っぽい。これはアメリカ(MIやバンド、スタジオの仕事、ライブ)での経験が大きいだろうか。

【2】作詞作曲、編曲
 彼の大きな魅力の1つである作詞作曲。曲の完成度が高いこと、編曲が優れていること。現在のところメインはネオクラシカルハードロックというジャンルでCDを出しているが、メタル系にとどまらないロックやフュージョン系、J-POPや演歌といったものまで発表している。

【3】ヴォーカル&コーラス
 彼のヴォーカルの魅力はミドルトーンとブルージー・ソウルフルな歌い回しだと思う。メジャー1st「Silent Scream」のタイトルチューン等は、オクターブ下のロートーンヴォイスもあり、彼の持ち味がよく出ていると思う。ハイトーンのメタルは本来の自分のスタイルとは違うと本人も語っている。
 彼の得意なバラードやブルーズロックのカヴァーを聴いて欲しい。彼のヴォーカリストとしてのポテンシャルを感じられるだろう。また、CDでは彼のコーラスワークも聴けるが、ピッチや音色も素晴らしく、アレンジもバッチリだ。
 彼の楽曲は英語が中心だが、彼は撥音を大切にするため、アメリカ時代にレッスンを受けているとのこと。

【4】エレキベース
 曲をドライヴさせるうねりが凄い。テクニック的にはギターとの速いユニゾン、ヴィブラートはギターにも負けない揺れが超絶。彼のサイトには、完成前のドラムとベースだけの音源が聴けることがあるが、ベースのみに集中すると音の表情が聴けて楽しい。ベースラインもよく練られている。

【5】ドラム
 センスが良く且つテクニックもハイレベル。自身が作詞作曲し歌うということもあるが、歌を引き立てるドラミングだと思う。クラシック曲のロックアレンジ版のフレージングも素晴らしい。単に2バスにクラシックのメロディを乗せるだけでなく、原曲のメロディを盛り立てるフィル(というかドラミング?)だ。ギターに耳が行きがちな彼の曲であるが、ドラムにも是非耳を澄ませて欲しい。彼はアメリカ時代に、テクニカルで有名なロッド・モーゲンスタイン(ex.ディキシー・ドレッグス、WINGER)に手ほどきを受けていたと聞く。

【6】キーボード&打ち込み
 キーボードも速いフレーズでなければ、それなりに弾ける、と語っている(ハズ)。

【7】MIDI & DAW
 PCを中心としたシステムでMIDI経由のハードシンセやソフトシンセも使いこなしているようだ。例えばハープシコードの音色は、ドラムのシンバルサウンドに埋もれがちになるがおそらく音源を2つにして重ねたり、音色をエディットして曲の中でも抜けるサウンドになっている。作曲においてもバリバリ使っているのかと思いきや、アコギと歌で作るとのこと。

【8】レコーディング
 インディーズ1stでは単体HDR(マルチトラックハードディスクレコーダー、ローランドVS-880)から、今はおそらくPCレコーディングに移行していると思うが、ギターは勿論、ドラムのマイキングまでやって自分で演奏して録って…、八面六臂の活躍とはこのことである。

【9】ミキシング
 インディーズ1stの頃は確かYAMAHAの03Dか何かを使っていたと思う。現在はPCでミキシングだと思うが、専門のエンジニアがいる世界である。一般的なメタル系ギタリストでここまでできる人はいないだろう。ドラムの各パートのバランス、スネアやバスドラの音作り、リヴァーブやイコライジング、コンプといった処理も普通に聞いていると全くわからない。そう、ミキシングエンジニアがやっていると思えるぐらい素晴らしい。メタル系ミュージシャンでミキシングにも手を出す人もいるが、ここまでのクオリティは出せていないと思う。適切な文章表現ができないのが悔しいがとにかくスゴイんデス!

【10】マスタリング
 インディーズ1stの頃は専門の業者に出していたと思うが、最近では自分で行っている。ハードやソフトの進歩や高性能化が著しいが、これもミキシングと同じく専門のエンジニアがやっている世界。私のような素人にはその大変さや難しさはほんの少ししかわからないが、このマスタリングという作業はよい耳と高い技術が必要だと思う。マルチバンドコンプで音圧をただ稼げばよいだけでなく、1曲の完成度を高めつつ、曲と曲とのつながりやアルバム全体も考えながら高めていくのだろう。

【11】映像編集
 発売されているDVDやネット上の映像も全て編集しているそうだ。「できるからやる」とは彼の言葉だが、センス良くまとめる彼の感性に驚く。

【12】CD/DVDジャケット制作
 インディーズ1st、メジャー1stのジャケット制作はプロのデザイナーさんの作品だが、その彼がKellyはデザイナーでも「食える」とおっしゃっていた。サイトのデザインもおそらく彼だけで作成していると思うが、本当にセンスがよく、絵心があると思う。

【13】ウェブサイト制作
 ウェブデザイナーでも食っていけるだろう。(笑)今までのオフィシャルサイトのデザインはどれも素晴らしかった。この世界も流れが早く、Web1.0時代はテーブルタグでレイアウトしていたが、現在はCSSが中心である。そういった技術もあっという間にモノにしてしまう。

【14】営業
 いわゆるレコード会社や音楽マネージメントと契約するのではなく、自分でCDを作成しそれを流通に載せCDショップで売っている。ネット上の販売も早かったし、海外のレーベルとも契約して、海外のファンも通販で彼の作品を手に入れることができた。amazonで、iTunesで検索して欲しい。大手と契約していなくともこうやって作品をリスナーに届けられている。彼がもしビジネスマンなら、どういう仕事ぶりだろうか。

【15】トーク
 ライヴではMCも1つの要素である。彼は大阪人であるが、彼にはお笑いの血が流れている(笑)。ある時は2枚目に、ジョークで笑わせる。時にはちょっぴり自虐的?なネタも織り交ぜて楽しませてくれる。オフィシャルブログを読んで貰うとその片鱗を感じることができるだろう。しかし、ブログでは彼の面白さは十分伝わらない。ライヴで、またクリニックで彼の絶妙なトークを体験して欲しい。


 今日日、ミュージシャンなら大なり小なり上記のことには手を染めている人も少なくないだろう。PCを中心としたDAWやMA等が個人ベースでできる、まさにそんな時代なのだから。しかし彼ほどの才能に恵まれ、その才能に溺れることなく努力し、結果を出している人は本当に一握りの人間だと思う。
 彼の魅力はイングヴェイに影響を受けた速弾きだけではない。それは本当にほんの一部だ(その部分の成長も著しく驚かされる)。いろんな面から細部を追っていくと、彼がどう自分の音楽を作り上げようとしているか、心血を注いでいるかを感じることができる。

 2010年7月2日(金)大阪で彼のライヴを3年ぶりに見る予定だ。楽しみでたまらない。
ライブレストラン フラミンゴ・ジ・アルーシャ

 彼はまだまだ活躍するだろうし、もっともっと有名になって世界で活躍して欲しい。40歳を迎える彼の今後から目が離せない。

Happy birthday, KELLY!!

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